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 Dixxxit

3.

試しに体位を変えて二人横向きになり、まずは後ろから彼を抱きしめた。
痛くなるのは怖くてつい力が入ってしまうからだ。特に、上から覆いかぶされれば誰だって緊張する。だからまずは安心させること。
次に、萎えかけている彼自身にそっと触れて、僕の事は忘れてこっちに集中して、とささやいた。別の快感を与えて意識を後ろから少し反らさせるためだ。気にしなければ怖さも減る。ついでに耳たぶを噛んだり、舐めたりしてみる。気が緩み、再び敏感になってきた彼は容易く吐息をもらす。

効果はあった。ほんの一瞬だけ入って、二、三度動いた。彼の体温を感じた。

だけどその後すぐ、また痛いのに逆戻り。意識するとダメなんだな。
僕はこの辺が潮時と判断し、するのは諦めて先に彼をイかせることにした。いつもやるように彼のを舐めて、しごく。ついでに後ろに中指を入れてみるとさすがにあっさり入った。あ、それ、効く、と不意に彼が熱い息を漏らす。そして、指なら入るのにな、と独り言のようにつぶやき、声を殺すようにして果てた。

僕はなんだか妙にほっとして、一瞬放心状態になる。僕の身体は当然ながらまだ満足してないが、精神的に一つ仕事を終えたような気分。このまま終わってもいいくらいだ。
すると彼がのそりと起き上がり、無言で座り込んだままの僕に近づき身をかがめた。あ、舐めてくれるつもりか、とぼんやり僕は見ている。

彼の熱い舌と指に吸い寄せられるように体中の血が集まる。もう何度目かの体験だけど、毎回良い。人間ってのはよく飽きもせず同じ行為を楽しめるものだと我ながら感心するくらい。
ときおり息をつき、唾液で濡れた口元を拭う彼があまりに色っぽいので、わざと言葉にして言ってみた。君の口の中に出したいと。
彼は直接答えなかったが、いいよ、という感じにうなづいたかと思うと、喉の奥深くまで一気に僕を容れてみせた。いつの間にそんな技覚えたんだ。最初こっちがやってみせたら変態扱いしたくせに。

僕はたまらず、すぐにイった。
身体に余韻が残る中勢いに任せて、僕の体液まみれになった彼の口にキスした。少し相手が怯んだのにも構わず衝動の赴くままに舌まで絡めて、苦いのも気にせず吸った。
イグナシオはぽかんとして、僕を見る。

「お前、自分のやつ、良く舐められるな。汚いとか思わねえの?」
「そんなの、誰のだって同じじゃん。君だって、自分の血も人の血も舐めるでしょ。」
「う、そうか。えー…でもなぁ。俺はイヤだ。」

* * *

宿の浴室に二人こっそり降りて、身体を洗った。むせ返るような蒸気に視界を阻まれ、何となく僕らは口数少なくなる。壁にもたれてぐったりと全身の力を抜くと、心地よい疲労に覆われていく。

今日の彼は行為の最中、いつもより少し饒舌だった。そして僕はと言えば口数が少なかったかもしれない。要は、お互い緊張してたんだな。
かっこわるかったけど幸いにも気まずくはならなかったようなので、良しとする。それどころか、こうして二人並んで黙っているのが心地よい。沈黙が苦手な僕としては珍しいことに。

「そういえば、今日のご感想は?」
まぁ、ロクなもんではないだろうとわかってるけど、とりあえず訊いてみる。

ちらりと横を見ると、王子はあごに手をあて、少し眉根をよせ、上目遣いに考え込むような顔。そしてボソッと言った。
「すげえ痛かった…。」
「う…まあ、わかってるよ。」
「でも、体験としては面白かったぜ。んでもって…」
一瞬の間が空いた。
「ちょっと怖かった。」

お前のことがじゃねえぞ、間違っても勘違いするなよ、と奇妙な執拗さで念を押した後、なんか、自分が自分じゃなくなるみたいな感じがしたんだよ、と王子は付け加えた。
「俺が俺だって思ってた部分に別のものが混じってくみたいな…。まあ、笑いたければ笑え。でも、俺はやっぱ馴れねえよ。お前、よくあんなの出来るな。」

なるほど、「技」の問題として捉えたわけか。さすが脳味噌筋肉。

「…まあ、『修行』を積んだからね。」
「誰と。」
「サマルトリアのご婦人方や殿方と。」
「…お前らしい答えだな。」

あからさまに彼が「ケッ」という顔をしたので、僕はなんとなく調子に乗り、彼の肩に腕をまわして耳元にささやいた。君にはぜひ僕の全てを伝授したいなあ、そのためには今日だけと言わず、気長に続けなきゃね、と。

そしたら王子も負けてなくて、いやいや、そっちの「修行」の成果をもっと見せろ、人に教えんのはそれからだ、そう言ってにやりと笑った。


夜はまだ終わらない。



終わり


作者後記

実は、絵以外でまともに18禁系書くのって経験浅いんで、なにげに苦労しました(もともとの属性はどっちかというと絵描きでしたし…)。第二話が1000字前後になるはずったのに大幅超過して第三話までいってしまう始末。要修行です。
それにしても、役割交代っつう、場合に寄ってはだいーぶドラマチックorロマンチックに出来たはずの設定なのに、見事になりませんでした。うちの王子達の性質上、(少なくとも表面上は)スポーツ感覚で処理されてしまった感じですね。「何だそりゃ」と思われた方がおられると思うのですが、まあ、思い詰めるだけじゃなくて、そういう割り切り方でHを楽しむ精神もアリということで…。雰囲気はどのみちよくなりますしね…って、言い訳にもなっていないか。
ちなみに、二人のいる風呂はトルコのハマームみたいな感じの蒸し風呂をイメージしてます。でも、深夜にこっそり入れるのか…?そもそも、その時間に営業してるのか?色々と電気の無い時代だと苦しそうな設定ですが、細かいところは無視しましょう…。


作者後記 2

 しまった。今日よーやく気づいたのですが、著者の不注意で文中にいささか矛盾してる箇所がありました。というのも…(以下、本文より更に露骨な表現を含みますので、白文字で書きます。好奇心をそそられた方のみ反転させてお読み下さい)
自分の精液舐めるのにも抵抗感があるロレ王子が、自分の尻に入ってたチムポをヘーキで口にいれられるっつうのは、フツーに考えると変ですよね。ゴムとか使ってるとかいうならまだしも、それはなさそうだしなあ…(注:ゴム使って尻に挿入すれば、舐めるときそれをとるとか、または取り替えるとかすればかなりの程度、汚い感じはせずにフェラ可能です)。現代モノのシチュエーション(ゴム有り、その気になれば水道も近くにあり)に馴れすぎてたが故のミスでした…。
と、いうわけで、うーん、すいません。今から書き換えるのも厳しいんで、すいませんが今回は見逃してください…。


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