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 Dixxxit

1.

ある月の美しい宵に、王子がいった。
「お前って、アレの最中によくしゃべるよな。」

「そうかな?」
と僕。

予想もしていなかったコメントに面食らうが、まあこいつは外国人だしな、と思い直し、いやなら静かにするよ、と謙虚に申し出てみる。
「いや、そういうんじゃなくて…。」
と王子は言いよどみ、ちょっときまりが悪そうに頭をかく。そして、色々はっきり言ってくれる方がこっちも安心するし、とぼそりと付け加えた。
はぁ、と要領を得ない僕の顔に彼は続ける。
「ほら、気持ちいいときは本当にいいっていうじゃん。いやな時はすぐそういうし。わかりやすくて助かる。」
というのだ。なんと、ほめているつもりらしい。

そういえば社交界にデビューしたてのころ、ローレシア人女性とつきあってる遊び仲間から聞いた事がある。ローレシア女の「イヤ」はOKって意味だって。服を脱がそうとすると「ダメよ」、身体に触ろうとすると「およしになって、いけませんわ」と反応がくるのだそうだ。で、それを鵜呑みにして途中でやめたりすると、あなたは男らしくない、と不興を買うらしい。
当時まだ年若かった僕は(15歳くらいだったかな?)、どうしてそんなややこしいことになるんだろ、と不思議に思った記憶がある。
男に攻められるローレシア人男性が、じゃあ、どういう反応をするのかは残念ながら情報が少なくて知らないのだが(ちなみに、女に攻められるローレシア女性の話もよく知らない)。

いずれにせよ、彼は僕以外の男を知らないし、今のところは技術その他の問題上、基本的に僕が「受けている」ので、彼としては僕をローレシア人女性と比較してそういうコメントになるのだろう。なるほど。
(ちなみに、これは断じて僕が「受け身でなされるまま」という意味ではありません。僕はちゃんと適切に動けます。おわかりかとは思いますが、一応念のため。)

そのとき、ふと思いついて僕は言った。
「君は、ぜんぜん、イヤって言わないよね。」
一瞬彼は言葉に詰まる。
「そりゃ、据え膳食わぬは…っていうからなぁ。」
「攻められても?」
「え。」
絶句する王子。
「たまには僕も、君を攻めてみたいなあ。」
「攻める…って、お前が、俺を?」
見るからに思い切り居心地悪そうな顔をする彼。馬鹿め、今まで考えた事無かったのか。僕はぞくぞくしてくる。そしてダメ押しのように耳元でこうささやいてやる。
「そうだよ。きっと愉しいよ?」
「……。」

王子は黙ってしまったが、ここですぐに拒絶しないのが彼のいいところ。
ローレシア王子イグナシオ殿下は筋金入りの冒険者。ゲテモノでもヤバげな洞窟でも「何でも一度は試してみる」がモットーなのだ。ここで突然方針を曲げたら名が廃る。そうだろ?

しかし、王子は口の端をわずかにゆがめて視線を反らし、斜め横をにらんだまま更なる沈黙が流れる事しばし。こりゃダメかなと僕は思い、次の言葉を探そうとした。
…が、そのとき、ついに、何かを決心したような目をして彼がまっすぐこっちを向き、言ったのだった。

「わかった。やれるもんならやってみろ。」

そうこなくっちゃ。



続く


作者後記

いやはや、続くなよ、バカ…という感じの展開ですね。引っ越し中に考えついたアホネタでございます。当然ながら次回は18禁的世界になります。一応は最善を尽くしますので、寛容な方のみお読みいただければ幸いにございます。

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